アジアカップ オーストラリア戦前日　オシム監督＆鈴木啓太会見 その２

――今の日本には、大きな大会の出場経験のない若い選手が多いようだが？

オシム監督　経験が大事ということなら、確かにオーストラリアにはＷ杯を経験した選手がたくさんいる。とはいえ、日本がそれほど経験の足りない、若すぎるチームだとも思わない。１年経って、メンバーの変更があったが、これはノーマルな範囲のものだ。去年のＷ杯に出ていない選手も、試合をするのに十分な経験は十分に持っている。

――オーストラリアと対戦することは楽しみだと思うが

オシム監督　私個人にとっては、強い相手と対戦するのは楽しみだ。しかし日本のメディアの方々は勝つことがよい経験だと思うようだが、強い相手と対戦することで、勝っても負けても、どのような経験ができるかということが重要だと思う。

――鈴木選手、大事な役割を担っているが、あなたの仕事の評価がこの数年で変わっていくと思うか？　例えば新聞の一面を飾るとか

鈴木　２０年、３０年先だと思いますが（笑）。僕の仕事は、いい選手が日本にはたくさんいるので、それぞれをつなげる役目であったり、自分自身がハードワークすることで、その選手たちが思いきって攻められるような役割だと思っている。ピースをつなぐ役割を評価していただけるのは、いいことだと思うが、もっと成長する必要があるし、個として試合を決定付けるミドルシュートとかを決められるようにもなりたい。ただし、今はできることは限られているので、９０分の中でやれることをやるだけだと思っている。

――フィジカルが強い相手に対してどんなプランがあるのか？

オシム監督　まずサッカーの質問と理解してお答えするが、サッカーの質問がもっと出てほしいものだ。フィジカルの違いはもちろん大きな問題だ。アスリートとしての能力は向こうが高い。それをどう挽回（ばんかい）するか？　簡単なことではない。しかし、方法がないわけではなない。向こうは能力が高いわけだが、それはフィジカルだけではなく、スキルやテクニックを兼ね備えた選手もいる。大変手ごわい相手だ。特にファンやメディアが、対戦相手の身長、体重ばかりに注目する国の代表チームとしては、大変な仕事になると思う。問題はオーストラリアが、フィジカルとテクニック両方において高いレベルにあるということだ。それらをいかに克服するかが重要なテーマとなる。われわれも、大きくてうまければ問題ないのだが、ただ大きいだけなら下手になるだろうし、そういう選手はサッカーではなくレスリングをすればよい。もっとも、レスリングの試合になったとしても、やはりオーストラリアの方が強いだろう。

――この１年やってきて、日本のよさを出せるようになったと思うが、オーストラリアという強い相手に対して、去年のＷ杯以上に出せるという手ごたえはあるか？

オシム監督　記者会見で聞かなくても、普段から話している仲ではないか。いつもの繰り返しになるのが残念だ。私個人としては、その種の質問は私に聞かないでほしいということだ。監督ではなく、メディアやサポーターや第３者がするものだ。代表監督は、自分のやりたいことをやる。それを第３者がどう評価するか。監督は、個人的な好みや方針でチームを作っていくものだ。だから、われわれが進歩しているのかしていないのかという評価は、世論にお任せする。