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イビチャ・オシム監督の町サラエボ
オシムと神の子
イビチャ・オシム監督

ガーナ戦前日 オシム監督会見

――新しい選手をたくさん入れたが、チーム作りのベースはどれくらい進んでいるか?

 どれくらいまで来ていると思うか?

――まだまだスタートの段階に見えるが

 初めだろうが終わりだろうが、メンバーを選ばなければならない。(DFが)3人では試合ができない。けが人が出たが、それは私の責任ではない。変えようと思って変えたのではなく、変えなければならない理由が生じたのだ。それで答えになっているだろうか? 闘莉王、坪井、加地の3人がけがをしてしまった。どうして3人の追加招集をしたのか、という質問だったはずだが、答えはおのずと質問の中にある。

――監督就任後、ガーナが最も強いチームだと言われているが、そのようなチームと対戦するにあたり、学習機会としてどのような期待を持っているか?

 対戦相手を決めるにあたり、ある程度強いチームとやりたいという希望を申し上げておいた。つまりいい試合で、負けても恥ずかしくない相手。同時に現在の日本の力を試すことができるチーム。つまりすべての選手が欧州でプレーしているような、そういう代表チームだ。しかも発展途上でまだ伸びしろのあるチーム。そういう相手と試合することによって、日本の選手たちのクレバーさ、危険さをはっきりさせられるかどうか、そういうものを測れるチャンスということで、そういう試合にしたいと思う。いろいろ候補が挙がったが、簡単に勝てる相手では意味がない。とはいえ現在、代表チームとの国際試合では簡単に勝てる相手というものもない。だからオプションは限られていたわけだ。今回は対戦可能な相手の中から最も強いチームを希望して、その通りになった。

――明日のスタメンについてどのような考えを持っているか?

 もしそれを私が知っていたら、発言するかもしれない。決めるのは単純な作業ではないのだ。選手同士も力が接近しているし、特徴のある選手をそろえている。もちろんガーナのスタメンが決まっていれば、ある程度の対策も決まってくるのだが。皆さんもご理解いただいていると思うが、1トップで来るか2トップで来るかで、違った状況に直面する。しかも非常に強い相手なので、敬意を払わなければならない。特に日本はけが人が出て、しかも守備のレギュラーを3人失っている。

――セットプレーの練習は三都主と遠藤が練習していたが、阿部に蹴らせることは考えていないのか?

 阿部と遠藤が(FKの)練習していたら、アレックス(三都主)はどんな気持ちになっただろうか?
 訳が間違っていたのだろうか? 冗談のつもりで言ったのだが、ウケなかった(会場、爆笑)。(通訳に)もう一回、ちゃんと訳してくれ。つまりアレックスと遠藤の2人がFKの練習をしていたが、阿部がやっていなかったからといって、なぜ3人目のキッカーとして考えられないのか。あるいは逆に、阿部と遠藤が練習していたら、アレックスはまったく蹴らないと皆さんはお考えになるのだろうか。そのへんの微妙なところをご理解いただきたい。何しろ日本代表にはFKの名手がたくさんいるが、残念ながら明日の試合では、全員が蹴れるほど数多くのチャンスを得ることはできないだろう。

 だから(今日、練習していたのは)明日の試合のためというよりも、Jリーグの試合でFKのチャンスを得たときに得点を決められるように、アレックスと遠藤は練習していたのだと思う(笑)。

――DFのけが人が出たということで、今野をその位置で練習させていた。彼はボランチの選手だがセンターバックもできると考えているのか?

 今野がどういうプレーヤーなのかは私も知っているつもりだが、トレーニングはトレーニング、試合は試合、そういうふうにご理解いただきたい。それから負傷者に代わる問題はデリケートであるということ。対戦相手のガーナは大変足の速い選手がいる。だから、いろんなオプションの中で何を優先させるかが問題になる。率直に申し上げて、青山と山口を招集したが、彼らが決して足の速い選手ではないことは、皆さんもご承知のとおりだろう。彼らと比べて今野がどうなのか、練習で試してみてもいいだろう? もうひとつ、今野自身もけがから復帰して間もない、微妙なコンディションだ。だから実際、この3人のうちの誰かを先発で出場させて、どんなプレーするのかということは、監督の私でも予想ができない。

 もし相手が2トップで来ることがはっきりしていたら、その場合は阿部をリベロに起用して、その前に水本を含む2人をストッパーに置くことを考えている。2ストッパー、プラス阿部で試合が始まるとして、ところが相手が1トップで来た。その場合、2ストッパーはどうするのか。つまり試合開始から、攻めに加わる選手が1人足りない、そういう状況になるわけだ。専門記者の皆さんには、今の説明でご理解いただけると思うが、何度も申し上げているように、両方の事態に対応できる選手を招集したつもりだ。2トップにも対応できるし、1トップで来てもすぐに変化して対応できる。どちらで来るか、それを予測するのは難しい。

 実はガーナの監督(クロード・ルロワ)は私の親友で、だからこそ「明日の先発は?」などと破廉恥な質問はできない。
 大体、そういう方向で試行錯誤していると考えてほしい。(スタメンについて)直接答えることは(相手があることなので)、私自身が先発を決めることはできないのだが、どういう方向性で何を考えているかということは、ヒントを与えているつもりだ。逆に皆さんが監督で、私が記者で「明日の先発はどうしますか?」と質問して皆さんに答えていただく、その方が私としては楽なのだが。

――今日の練習でサイドからの攻撃について細かい指示を与えていたが、それはガーナを想定した練習なのか、それとも普段からの練習なのか

 特に明日の試合だけでも、日本代表の特徴というわけでもない。現在の世界のサッカーのトレンドである。近代サッカーではどんどんスペースが狭くなって、特に中盤の真ん中をペネトレイト(突破)できないようにブロックするというのが、現在のディフェンスの主流なので、残された攻撃のオプションはサイドから、ということになる。だからサイド攻撃を重視するというのは、私だけでなくどの監督もやっていることだ。

――DFの話が出たが、それではオフェンスについてはどうか? 相手は4バックで来るようだが、どういうFWの組み合わせがふさわしいと思うか?

 私も4バックと予想している。では日本が4トップで行く、という話ではないだろう(笑)。ただ向こうの4バックのうち、サイドバックの選手は非常に攻撃的だろうと予想している。だから向こうのDFが4枚、というのは正確ではない。攻撃もできる選手がそこに含まれている。つまり日本の攻撃陣の中にはポリバレント――つまり複数のポジションをこなせる選手を入れようと思っている。攻撃もできるけれど、守備もできる、そういう選手だ。以上のヒントで(スタメンを)予想してほしい。

――相手のDFに攻撃的な選手がいるということで、今日の練習で巻に相手の守備陣を上がらせないような指示をしていたようだが、格上の相手と対戦するということで前線からのケアが重要であると考えているのか?

 確かに今日の練習中にそういう指示は出した。だが、それは特別なことではないし、私が発明したことでもない。相手が4バックか3バックかによっていろんなやり方があるわけだが、大事なことは、これは巻だけではなく、我那覇にも佐藤寿人にも言えることだが、チームのほかのメンバーがどうしたらプレーがしやすくなるか、考えてプレーをしろと指示した。特別なことではない。それから現在のサッカーは、ボールを失った瞬間からディフェンスが始まる。つまりFWの選手がボールを取られたら、最初にDFにならなければならない。そういうことを確認していた。

 ただ、今の質問は大変よい質問だ。まるで私がサッカー学校のテストを受けていて、皆さんが質問を出して私が回答をしているような感じだ。「戦術」という科目で私が合格したかどうか、判断してください。

――今日の練習で三都主が左サイドバックで練習していた。ジーコ監督時代でも同じポジションでプレーして、本来の持ち味である攻撃力が出せなかったが、監督は彼がそのポジションでできると考えているのか?

 ワールドカップの試合は見ていたが、クロアチア戦、それからもしかしたらオーストラリア戦でも、アレックスが一番良いDFだったではないか。皆さんももう一度、試合のビデオを見てほしい。皆さんもアレックスがどんな選手なのか、どんなことができて、どんなことができないのか、ご存じだろう。問題はアレックスよりも良い選手、代わりになる選手がいるか、ということ。しかも彼は左利きだ。日本で左利きは貴重だろう? 貴重でしかも、アレックスよりも優れた選手が、果たして何人いるだろうか? 彼があのポジションで練習していたのは、私がジーコに相談したからでも、アレックスの希望を聞いたわけでもない。必要に迫られて、あそこでプレーしてもらったということだ。

 若い選手の中に、あの役割ができる選手がいるのかもしれない。U-21代表や、その下の年代にも同じポジションの選手はいるから、彼らが伸びてくれば別の使い方があるのかもしれない。これまで駒野をあのポジションで使ってきた。テストの結果は、合格とも不合格ともいえる。つまり守備は合格、良いプレーをしていた。しかし攻撃面では、もっとできるのではないかと思った。これ以上お話すると、個人の人格の問題になってしまう。これ以上、選手1人1人を俎上(そじょう)に載せて料理するということは控えさせていただきたい。アレックスがあの位置でプレーするのが気に入らないという人は、どうかそういう記事を書いてください。ただし、アレックスのせいではなく、オシムの使い方が悪いと書いてほしい。

――監督の話の中で「ポリバレント」、つまり複数のポジションを使いこなすという言葉は非常に重要だと思われるが、今後もキーワードとなり得るのか?

「ポリバレント」というのは、実は化学の言葉で、そういう本を読めばたくさん出てくる。「化学的なサッカー」というのも悪くはないだろう(笑)。

オシム監督

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