サウジアラビア戦前日 オシム監督会見 AFCアジアカップ2007予選 第3戦
――ハードなスケジュールだが、コンディションについてどう考えるか?
質問の意味は年間の日程についてか。それとも秋はいつごろ始まるかということか。間もなく秋になるが。決まったことを今さらあれこれ言っても仕方がないので、ポジティブな面を考えるようにしている。
――とはいえこの暑さ、そしてこの次の試合は高地ということで、選手がなかなか走れないのは仕方のないこととして、試合のやり方、もしくは練習のやり方を変える考えはあるのか?
サウジアラビアの標高は高くないと思う。気温は日本よりも高いが、Jリーグでは最も暑い8月に試合をこなしてきている選手たちだ。暑さには適応できると考えている。こういう条件だからできる、できないということは言いたくない。
――アウエーの戦い方になるのか?
特にアウエーということは意識していない。ただ、初招集や経験の浅い選手が多いので、国際試合の経験が足りない部分で心配はある。だが、これをチャンスととらえて、出場して経験を積んでもらいたい。これは一般論でサウジのことを言っているのではないが、ホームのほうがプレッシャーを感じ、逆にアウエーのほうが楽に戦えることもある。サウジを含めた中東のチームは、ホームが有利ということは私も知っている。しかしサッカーの試合は戦わなければ分からない。(試合が)始まれば分かるだろう。
――就任したころと比べて、ここでの練習は1つ1つの時間が短く感じられる。それは選手が理解するようになったからか、それともハードスケジュールゆえに時間を短くしているのか?
今日は短かったとは思わないが、そう感じたのであれば、理由は明日が試合だからだろう。短い割にはインテンシブ(集中的)にできたと思う。だから最初のころと何かが変わったというわけではない。まだ選手は、お互いを理解し合おうとしている状況だ。
――サウジも日本もアジアカップで3度優勝している強豪同士だが、この試合の重要性をどう感じているか?
人生もそうだが、サッカーというのはどれだけその試合に勝ちたいか、どれだけ良い成績を残したいか、それを感じる度合いによって、重要かそうでないかが決まってくると思う。私に関して言えば、あらゆる国際試合が大切だ。プロフェッショナルとしてそういう態度なので、サウジとはブラジルと対戦するような気持ちで戦うつもりだ。
――明日の試合では、選手のどんなところに注目してさい配を行うのか?
どちらのチームについてか?
――日本のチームです
基準なり物差しということか? それなら、はかりに掛ければすむ話だと思うが。もう一度質問の主旨を説明してほしい。
――当然、結果は大事だとは思うが、これから長く戦うにあたって、監督の戦術を表現できる選手を見極めるのか、それとも若い選手の成長を見極めるのか、監督の基準があるのであれば教えてほしい
私自身に戦術というものはない。ただサッカーをするだけだ。つまり相手によって変わるもので、相手へのリスペクトを忘れずに臨むことが大切だ。理想は結果が伴い、内容も良いことだ。どちらか1つを選ぶということなら、われわれのチームが今、どれくらいの水準にあるのか考えるべきだと思う。
残念ながらジャーナリストの皆さんは、最終的には勝ったか負けたかということを基準に考える。ここで「結果も内容も」という話をすると、将来内容の話は忘れられて「結果を追求した」、あるいは「しなかった」ということだけが記事として残る。結果は報道されるが、内容についてはどんなに良い内容であっても明後日には忘れられてしまう。もっともジャーナリストの中には、試合が終わった瞬間に内容を忘れる能力を持った方もいるようだが。
――明日の試合に向けて、サウジ代表にどんな印象を持っているか?(サウジアラビア人記者)
サウジがアジアでどういう水準にあるのか、私がお話するのは失礼にあたる。はっきり言えることは、サウジは日本と同様、ワールドカップ(W杯)に何度も参加したチームであるという事実だけだ。
――サウジは長らく日本に勝っていない。なぜだと思うか?(サウジアラビア人記者)
これまでの日本とサウジとの対戦成績について詳しくは知らない。なぜなら私は、それらの試合の当事者ではなかったからだ。過去は過去として、今後の両国の対戦が新しい歴史を刻むことを期待したいと思う。
明日の試合について言えば、サウジが日本に勝てない理由はないと思う。それは日本についても同様だ。あらゆる国際試合での代表同士の試合は真剣勝負だし、ここ数年では各国の力の差は小さくなっている。私自身としては、サッカーは人生のようなものだと思っているが、勝敗や成功・失敗の差を分けるのは、ほんの小さなニュアンスである。小さな部分で成功したり失敗したりする。そして監督としては、対戦相手はどこであれ「ブラジルとやるんだ」と考えて全力で戦う。それが私のポリシーだ。
――監督ほど経験があるのなら、選手の様子を見ていい試合ができるかどうか分かると思う。明日はいい試合ができそうか?
それはやってみないと分からない。選手たちは一生懸命にトレーニングしている。もしかしたら通常の能力以上にやってくれているのかもしれない。というのも、私も監督になって日が浅いし、新たに呼ばれた選手も多いので、お互いに相手が何を要求しているのか、どういう能力を持っているのか、もしかしたら見極め切れていないのかもしれない。
試合についていえば、お互いアジアの中では強国であり、お互いに細かいところまで情報を持っていると思う。日本もサウジを研究しているし、向こうもおそらく研究しているだろう。そういうところをいかに使うことができるか、選手が役立てられるかというところで、試合は進んでいくのだと思う。
――今回の代表にはW杯出場選手が4人しかいないが(実際には5人)なぜか。それは彼らのレベルが気に入らないのか、それともけがをしているのか。それと、サウジの気温は日本の選手にどんな影響を与えると思うか?(サウジアラビア人記者)
W杯に出場した選手の一部は引退を表明したり、もう代表ではプレーしないと宣言している。彼らは失望したのかもしれない。同時に日本は、4年後の南アフリカW杯の予選を突破して、本大会に出場しようとしている。だから4年後というスパンを考えて、選手の能力や年齢を加味して選考を行っている。
私は代表監督だが、代表チームを私物化しているわけでは決してない。私の一存だけで、選手選考をしているのではないことを申し上げておきたい。私の考えは、世界のサッカーの進歩に追いついていくことが基本だ。日本代表には、走る能力があって、もっとアグレッシブな選手が必要だと考える。世界のサッカーは、そういう方向に進化しようとしている。美しさのために死んでもいいと考える人々が存在する余地は、現代のサッカーではますます小さくなっている。個人的には実に残念なことではあるが、今のサッカーはそういう方向になっている。人生もそうではないか。昔の旅行は歩いたり、汽車に乗ったり、実にのんびりしたものだった。今はみんな飛行機に乗る。うまく答えられただろうか?
気温については、言葉にするよりも、ここにいる皆さんが汗だくになっていることでご理解いただけるだろう。座っているだけでも大変なのだから、走る選手のことも考えていただきたい。
――今日はDFを固定していたが、もともと招集メンバーにDFが足りない中、もしアクシデントが起こったらどう対処しようと考えているのか?
どうしたらいいでしょう? 解決策があったら教えてほしい。
――例えば阿部や伊野波を使うという手も考えられるが、その伊野波は昨日けがをしてしまって心配しているのだが
これまで何度か話していることだが、複数のポジションができる選手を使っていきたいという話と関連して、DFのことも考えていただきたい。もしそういう選手を使わないで試合に負けてしまうのであれば、それは進歩ではなく後退ということになる。私の考えでは、ディフェンスの選手、攻撃の選手という区別はない。その時の局面においてチーム全体の目標があって、それに向かって全員が力を合わせる。そういうことができるようなチームを作ろうと考えている。だから必要とあれば、巻をストッパーに、闘莉王をトップに置くこともあり得る。やってみたら面白いかもしれない。本当に、そういう場面が出てくるかもしれない。
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