オシム 私からコメントはない。質問がなければ、もう遅いので、そろそろ家に帰ろうかと思う。
――オーストリアから離れて数年経つが、オーストリアはどのくらい進歩したと思うか?(地元記者)
オシム まず、美しいスタジアムができた。このようなものは、私がいたときには、なかった。サッカーのレベルも上がったと思う。すべての分野において言えることだが、人生と同じで、サッカーも進歩している。皆さんは今日のパフォーマンスには満足していないようだが、20年前のサッカーと比べれば圧倒的に進歩している。ノスタルジックな要素を皆さんお持ちだろうが、それはネガティブなものが含まれている。
――アジアカップと同様、日本のクオリティーの高さが見られたと同時に、問題も見られたと思うが
オシム どのような質問だろうか。もちろん私も同じものを見ていた。どう答えればいいのだろう。私もよく観察していたから分かるが、パフォーマンスに問題があるからといって、選手をチームから出したとしても、それでパフォーマンスが上がるものではない。サッカーはそんなに単純なものではない。非常に複雑なものだ。
――ヒッケルスベルガー監督が、日本代表はオーストリア代表よりレベルが高いといっていたが(地元記者)
オシム 2人とも立場が違うので、自分としては逆のことを言いたい。こちらにも修正点があった。オーストリアもそれなりのプレーをしていた。確かに、コンビネーションやカウンターなどでうまくいかないところはあったが、それらはすべて個人的なミスによるものだった。スペースがなかったり、トラップミスしたり、そのような細かいミスがあったと思う。ただし、守備を固めてカウンターという方向性は間違いなかったと思う。
――ヒッケルスベルガー監督は「16メートルまでは素晴らしい。ただ、その後が……」と言っていたのが「ストライカーがよくない」と訳されていた。オシム監督は「内容が大事だ」と言っていたが、それは「しっかりしたシュートチャンスを作る」という意味だったと思う。そこでの課題があったと思うが?
オシム もしかしたらピッチの縦の両サイドを16メートル狭くしたら、日本はもっと点が取れるかもしれない。もちろん、ボールを奪ってからゴールに向かうまでには距離がある。もっと効率よくチャンスを作らないといけない。
――16メートルまでは素晴らしいのに点が取れない、というのは欧州でプレーできるようなFWがいないということか(地元記者)
オシム 根本的に優秀なFWというのは、どのチームにも必要である。ただし、例えばバルセロナなどを見ていても、彼らは素晴らしいFWがたくさんいるにもかかわらず、毎年新しい選手を探している。これはすべてのチームに当てはまることだと思う。質の高い優秀なFWを探し求めるのは、どこのチームでも苦労している。われわれには、フランクフルトでプレーしている、非常に優秀なFW(高原直泰)がいるが、彼だけに頼ることはできない。けがやレッドカードで出られない状況も考えて、今日の試合はある意味、良いテストになったと思う。もちろんイングランドやイタリアなどでも、優秀なFWというものは求められている。Jリーグでは、FWのポジションはよくブラジル人選手がスタメンでプレーしているので、日本人の個の高い能力を持ったFWが出てくるのは難しいかもしれない。ブラジル人が日本人になるには、少なくとも6〜7年はかかるだろう。その時期には、私は死んでいるかもしれない(笑)。
――オーストリアが前半38分頃からブーイングを受けたことについて、どう思うか。びっくりしたか(地元記者)
オシム 数年前なら驚いたが、今は驚かない。素晴らしいではないか、観客は38分までブーイングしなかった。そこまで待ってくれたのだから、優しいではないか。チームによっては、試合が始まってすぐにブーイングを受けることもある。場合によっては、試合が始まる前からブーイングが起こることもある。だから、38分までブーイングなしでプレーができて、幸せだったのではないか(笑)。
ヒッケルスベルガー もしかしたら、ウォーミングアップからブーイングしてくれたら、試合中は疲れてやめるんじゃないか(笑)。
――PK戦でまたロッカールームに引っ込んだが、これはノスタルジアによるものか(地元記者)
オシム PK戦になると、自然に体がロッカールームに向かう(笑)。
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